Masahiro & Naoyuki’s Paper in Nat. Commun. / 早川くん,砂山くんの論文が掲載されました

Flattened 1D fragments of fullerene C60 that exhibit robustness toward multi-electron reduction
M. Hayakawa, N. Sunayama, S. I. Takagi, Y. Matsuo, A. Tamaki, S. Yamaguchi, S. Seki, A. Fukazawa*
Nat. Commun. 2023, 14, article number 2741.
DOI: 10.1038/s41467-023-38300-3
originally posted on ChemRxiv on August 2022
DOI: 10.26434/chemrxiv-2022-9w59c
2022年8月に ChemRxiv にて発表した電子受容性炭化水素に関する論文が Nature Communications 誌に掲載されました。
フラーレンは,炭素骨格のみからなるにもかかわらず多電子還元に対して安定であるという特異な分子ですが,その特性に剛直な球状骨格は必須なのでしょうか?本研究は,そんな素朴な疑問に端を発しています。
本研究では,フラーレンの電子受容体としての特徴を実現するためには 5員環の部分構造が重要であるとの考えのもと,フラーレン C60と5員環の連結様式が同じ一次元状炭化水素「オリゴビインデニリデン」を設計し,その合成に成功しました。この分子は,C60よりも対称性がはるかに低く,個々の炭素原子も平坦な構造をもつにもかかわらず,5員環の数と同数までの電子を受容できることがわかりました。この成果を通して,フラーレンの電子受容体としての性質の根本を支えているのは5員環の部分構造であることを明らかにしました。本研究で見出した分子設計手法は,炭化水素骨格のみで優れた電子受容性を実現できる新手法であることから,有機半導体や太陽電池,電池や触媒など,電子の輸送や授受がかかわる様々な機能性材料の開発につながることが期待されます。
本研究は,名古屋大学大学院理学研究科在職時の最後の7ヶ月,山口茂弘先生に全力で後押ししていただき当時学部4年生の田巻さんと一緒にスタートさせました。その後,深澤研立ち上げメンバーの早川くん (現・京大院理 畠山研 助教) と砂山くん (2022年3月 修士卒) とが見事に創り上げ,髙木くん (現M2) と松尾くん (2021年3月 学部卒) の頑張りによってまとめることができました。また,表題分子の電荷輸送特性の評価にあたっては,京都大学大学院工学研究科 関 修平先生にお世話になりました。心より感謝申し上げます。
本論文の内容は,京都大学アイセムスからプレスリリースを行いました。詳しくはこちら。